GOH HOTODA氏のICONスタジオが世界中のアーティストと“ランデヴー”

09/01/2009
ミキシング・エンジニアとしてマドンナや坂本龍一、宇多田ヒカルなど世界中のアーティストの音楽制作に携わってきたGOH HOTODA氏がプロデュースした『ランデヴー・イン・パリ』(SICP 20113-4) は、フランスのTV界で活躍するジャスミン・ロイのボーカルをフィーチャーし、アル・ジャロウやフランシス・レイ、ビル・エヴァンス、マーカス・ミラー、フィリップ・セス・トリオ、鳥山雄司など、そうそうたるトップ・ミュージシャン達が参加。高品質なBlu-spec CDと、パリの名所を収めたBGV映像DVD (5.1chサラウンド仕様) の2枚組でリリースされたこの作品は、米仏日のアーティストがインターネットを介したやり取りを行うことで生み出されました。

   

ビルボードのスムーズジャズ部門でNo.1を記録したフィリップ・セス・トリオのカバー作品集『ボディ・アンド・ソウル』など、プロデューサーとしても手腕を発揮するHOTODA氏は、「最初はフィリップと、フランスの名曲をジャズ風にカバーした作品を作ることだけが決まっていました」と語ります。「そのうちに話が広がって、マーカス・ミラーが参加したり、アル・ジャロウとデュエットすることになったり、鳥山さんに参加してもらったり。友情によるE-mailプロジェクトのような感じで、全てがインターネット上でやり取りされました」。

実際の制作作業では、フィリップ・セスやマーク・アントワーンが作ったセッションが、DigiDeliveryファイル交換システムにより、ダビングを行うミュージシャンや、ジャスミンのボーカル・レコーディングを行うフランスのPro Toolsスタジオへ送られました。「最近は、アーティスト本人が演奏を録音することが多くなりました。フィリップやマーカスもそうですし、アル・ジャロウのボーカルも、フィリップが自分のスタジオで録ったと言ってましたね。マーカスはMboxを使っているみたいだし、鳥山さんもPro Toolsを使って、自分でレコーディングしています。どれも、クオリティ的には全く問題ないですね」。

2007年に設立されたGOH HOTODA氏のプライベート・スタジオ (「DigiZine」掲載ストーリー) は、制作活動の中核となっており、ICON D-Control統合コンソール・システムを中心に、コンパクトなビンテージ・アナログ・コンソールや選び抜かれたアウトボード機器が用意されています。「今作に収録された作品には、このスタジオができたときに、最初にテスト的にミックスしたものも含まれていますから、結構時間をかけたプロジェクトですね」という氏にとって、ICONとPro Tools|HDが実現する作業環境は不可欠な存在です。「従来のアナログ・コンソールでの作業は、やり直しをすることが難しかったんで、一度作業したら終わりでした。今回の作業では、例えばアル・ジャロウとのデュエットなんて最初は話も無かったし、それが無い状態で2回くらいミックスの作業をしたんですけど、途中でデュエットすることになり、曲を進化させることができた。時間を前後させて仕事ができる環境ならではの考え方だと思います」。

現在、ほぼ全ての作品を自身のスタジオでICONミックスしている氏は、この3年の間にICONの使い方も大きく変化したと語ります。「最初は、アナログ的なデジタル・コンソールという考え方で作業していましたが、最近は、よりデジタル的な意識で使うようになりましたし、オートメーションやトリムの使い方なども向上していると思います。例えば、長いプログラムをミックスするときのレベルの管理なども、曲毎にマーカーを入れてコントロールできたりするのは、このシステムならではの便利な点ですね。最近は、ICON D-CommandシステムのあるButterflyスタジオで作業することはありますが、東京のスタジオに行くことは無くなりましたね」。



   
当初、この作品はステレオでミックスが行われましたが、その後で追加されることになったBGV映像DVDには5.1サラウンド・ミックスも収められています。「最初は5.1のディスクリートでサラウンド・ミックスしようと思ったんですが、マスタリングされたステレオのサウンドと比較すると、どうしても迫力が出にくいというか、商業的な価値を出すのが難しい。それで(TC Electronic) Unwrapプラグインを試してみたら、かなり優れたサウンドでサラウンドにできるし、パラメーターも細かいところまでコントロールできる。ディスクリートでサラウンド・ミックスしたものとUnwrapでサラウンドにしたものを何曲か作って比較してみたら、映像と一緒に見たときに、Unwrapで作ったものの方が音の迫力があるんですね」。

こうしたUnwrapによりサラウンド化された音源は、その後SC Allianceの山本雅之氏の助力を得て、最終的な形に仕上げられました。「このスタジオでUnwrapの7割くらいの設定を作り、最後はSC AllianceのICONスタジオの、正確にキャリブレーションされたシステムを使って、山本さんに細かい部分を調整してもらったりしました。ステレオでも、ある程度奥行きを感じるような仕上がりのミックスにしておくと、Unwrap上で位相をプロセスする際にも、うまく機能すると思います。布袋寅泰さんの東大寺でのライブをDVD用にサラウンド・ミックスする作業も、オーディエンスやサラウンド効果のエフェクトなどはディスクリートでミックスしながら、音楽部分の音圧のあるミックスはステレオのステムをUnwrapでテクニカルにサラウンドにしたんですが、すごく音が大きくなるし、最終的に良い仕上がりになりましたね」。

この作品の完成後、ICONシステムはPro Tools 8 softwareへのアップグレードが行われました。「波形が見やすくなったし、10インサートに増えたのも便利です。ユニバース・ウィンドウも編集ウィンドウ内に表示されるのが非常に良いですね。それにICONとの親和性も、センドを選ぶとアサイン・マトリクス・モードによりリストが表示されるなど、さらに向上しています。最近は、アナログのアウトボードとデジタルのプラグインをうまく組み合わせて使うようになりましたね。プラグインで、よく使うのは(Waves) SSL 4000 Collectionで、新しく追加されたSSL G-Channelは固めのシャキンとしたサウンドなんで、それを組み合わせて使ったりすると面白いですね。SSLは、ゲートとコンプがひとつのプラグインで使えるのが、非常に便利です。それ以外のコンプでは (Digidesign) Smack!が、かかりが良くて面白いですね」。

自身のWebサイト (www.hotoda.com) も運営しているHOTODA氏は、プライベートなスタジオでの活動がメインになったことで、逆に仕事の幅も広がったと語ります。Webに用意されたミックス・マスタリングのサービスには、世界中からオファーが届いています。「最近はテイトウワさんとか、Micro、Doubleといったアーティストの仕事をする一方で、日本のヘビメタの人から連絡が来てミックスをした作品もありますし、ギリシャの民謡をアレンジした人とか、日本にいる外国人の人からも依頼があります。昔は、ひとつの作品に取り掛かっていると、その期間は他の仕事をするのが難しかったんですが、今なら複数のプロジェクトを並行して進めることも簡単です。この環境だからこそ実現していることですね」。

My Space 「Rendez Vous In Paris」アーティスト・ページ:
http://www.myspace.com/parisfaubourgs